ひとりの歌

今日は休みだけど 天気が悪いから家にいて
おなかが空いたから コンビニに買い物に行ったよ
オレンジ色に包まれて 温かそうな中華まん
一つ買って 家に帰った

冬の寒さにさらされて ちょっと冷めてしまったけど
氷のような僕の指にはまだ温かかった
玄関でコートも脱がずに 缶コーヒーで流し込んだ
そして気づいた みんな砂糖だった

のどの奥から 手の包み紙から あふれ出す褐色の粉
甘いよりも 苦いよりも 渇く 口の中の水気が吸われて
湧き起こる感情はただ一つだけ
こんなに苦しいってことを誰かに伝えたい

伝えることがあるのがひたすら嬉しくて
大声で笑いたかったけど
口の中の砂糖はまだ 吐ききれていないから
とめどなく涙が流れた

彼女に電話しよう 携帯電話を耳に当てた
友達と夕食らしい じゃあ切るね 電話は切れた
何バイト伝えられただろうか
耳に携帯を当て続けた

聞き取れないほどの風の音
かすかな歌声が聞こえる
星よりひそかに 途切れることなく
彼/彼女は歌ってる

どうしてそんなにきれいな声で
歌い続けてられるの?
誰も聞いていないとわかっているのに
その事に僕は 耐えられない

声を出したい
伝えるものなんてなにもない
あぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー
ただ誰か 気づいて欲しくて
おぉぉぉォォォーーーーー
環状道路に音を投げ続けた

荷台を軋ませ 坂を下るトラックが発する音の壁
ぶち破れ この喉は裂けてしまえ
でも音は互いにすり抜けて 僕の鼓膜を揺らす
こちらの声は届いていますか?