鉄コン筋クリート

アジカンのコンサートチケットを持ってたんだけど、2週間前に震災があって、お流れ。
払い戻しはしてもらったけど、初アジカンライブだったのに、がっかり。
その代償というわけでもなくはないが、「鉄コン筋クリート」を見た。

鉄コン筋クリートは2006年のアニメ映画。原作・松本大洋
主題歌は「或る街の群青」。味缶のシングルであり、アルバム・ワールドワールドワールドの12曲目。

私はここまでの情報は知っていたものの、映画はリアルタイムで見なかったし、CMとか事前の外部情報ナッシング。
しかも「浦安鉄筋家族」と勘違いしていたフシがあり、なんでギャグマンガの歌を??と疑問に思っていた。
今回は先に原作を見つけて読み、そのあとDVDを見た。
結論:「或る街の群青は完全カンペキに原作のためのフルオーダーメイド」
今まで「いい曲だけど歌詞がよくわからんな」と思っていたが、原作しらなけりゃわからないのあたりまえ!

※以下、ネタバレあり
<あらすじ>
宝町にはクロとシロという二人の少年がいた。
親のない二人は学校にもいかず、町を跳び回っては盗みと暴力を繰り返していた。
殺伐としていたが、不思議に穏やかな空気の中、途方もなく力の強いクロと底抜けに無邪気なシロのコンビは助けあいながら生きていた。
ところが、町を牛耳るヤクザがあやしげな実業家と手を組み、子供向けテーマパークを中心とした再開発に乗り出してからというもの、町に不穏な空気がただよう。
クロはふとしたきっかけでヤクザの若頭をボコボコにしてしまい、シロともども命を狙われる身となってしまう。
暗殺者からシロを守り切る自信を持てなくなったクロ。警察に保護されたシロをクロは突き放す。
「シロは前から足手まといだった。お前の寝言がいちいちムカツクんだよ。」
だがその言葉とは裏腹に、シロと別れたクロは暗殺者との戦いにのめり込み、徐々に心が黒い深みに沈んでいく。
クロは暗殺者の手を逃れ、シロと再開できるのか?そしてシロの夢は叶うのか?

シロは年齢よりも幼い子どものようで、いつも「町にリンゴの種を植えて木にする」だとか「お金を貯めて二人で飛行機にのる」だとか夢のようなことを言っている。クロはそんなシロを叱るでもなく、といって誉めるでもなく、見守っている。はたから見れば、シロの身の回りの世話を行っているクロが一方的にシロを保護しているように見える。それは事実だ。
だが小さい頃から二人を見てきたじいさんは言う。「あの子(シロ)はお前(クロ)が考えているよりずっと強い。そしてお前さんは自分で思ってるほど逞しくはない。ワシの目には今までずっとお前がシロに守られてきとるように映る」
クロはとても現実的な考え方で大抵のことをうまくできるが、どうにもできないことにぶち当たると打ちのめされ町にしがみつくばかり。シロはどうにもならない状況で、「こんな町は嫌いだ」と世界を拒否したり、夢を描いて前に進むことができる。それはクロとはまた別の強さだ。
ラストシーンで示唆される二人のその後、本当に世界を変えてしまったことに感動させられる。

さて、歌詞だ。
冒頭は、夢から目が覚める頃。
・人々は自分の願うかたちを求め、世界は混乱している。
 何を信じたらよいかわからない。俺は何も信じない。
 「だが愛は信じろよ。大切な事なんだよ。」ネズミは言う。
 この町で持たざる者が生きるためには、ネズミのようにヤクザにでもなるしかない。その悲哀。
・イタチとの争いの後、目覚めたクロは駆け出す。
 足りない部分を持っている相棒のもとへ帰るため。
 飛び出した彼の目に景色など入らない。
・暗殺者に襲われたシロは町が嫌になる。
 燃えてしまえばいいとガソリンに火をつけ、黒くなって崩れ落ちたよ(暗殺者が)
 一人になったクロは寂しくて暴力と血で心を塗りつぶした。
 追い詰められたところに現れたイタチに導かれ闇に落ちかけた。
・心のなかを彷徨うクロ。
 落ち込む深い海。
 「ウチを建てようよ、二人で海の見える場所にさ」
・以下略!

このように、一曲の歌詞で物語の後半〜ラストの展開をトレースしているのである。
まさにこの映画のための曲。
これぞコラボレーション。
「光だって闇だってきっと」の意味がやっと理解できて、目からウロコというか、勢い余って泣けてきた。

おっと、映画のことを書き忘れていた。
いいんじゃないかな。蒼井優も良くやってくれてるしね。