大聖堂 果てしなき世界

イングランド一の大聖堂がキングズブリッジに建造されてから150年。
修道院と町は良き関係を保ち、繁栄してきた。

だが時代は変わる。
教会は保守的な権力層となり変化を拒む。
大聖堂や防壁、橋は老朽化が進む。
近くのシャーリングの町と羊毛業が競合し、市の古臭い設備は顧客を遠ざける。
王位に纏わりつく謀の噂、やがて百年戦争として語られるフランスとの戦争。
そして祈祷では癒せない流行病の影。

キングズブリッジと近くの村ウィグリーに住む4人の子供たちがやがて大きくなり、それぞれ異なる道を目指す。
人生が交わったり離れたりしながらも並走する半世紀。
主人公は4人の子供たちだが、この文庫本3巻組の本では町の人すべてが主人公といえるほど生き生きと描かれる。ブルワー(酒屋)もウェバー(織屋)もバーバー(床屋)も。何てわかりやすい命名法なんだw
町が発展するとともに人々は複雑に結びついている。修道院と商人ギルド、修道院と女子修道院、司教と修道院長、伯爵と領主と農民、ギルド親方と徒弟、さまざまな関係のなかで人々は時に分裂し、時に団結して世界の変化に対応していく。

児玉さんも言うように、このボリュームの物語にのめりこめるのは読書家にとって至福。
ちょっと残念なのは、前作で章の間にはさまれていた、大聖堂が完成するまでの挿絵が今回はないこと。ワクワク感が減。あの絵のおかげで難しい建築用語も理解しやすかったのだが。まあ今回はあまり建築が主題で無かったりもするけど、巻き上げ機とか橋の土台とかのイラストがあると楽しかったと思う。
それに表紙も何だか無機質ぽくなってしまって、昔のような絵の方が良かったなぁ。