フィッシュルについて

原神のフィッシュルというキャラクターについて、思っていることを書きたい。内容を簡潔にまとめると、2022年夏の金リンゴイベント以来フィッシュルのことが大好きなんだ、ということだ。

原神は2020年にサービス開始したオンラインゲームで、およそ1ヶ月半ごとにアップデートされてコンテンツが追加されている。私は2020年のサービス開始日にインストールしたのだが、スマホのスペック不足で1ヶ月ほどで触らなくなってしまった。その後タブレットを購入して2022年の年始くらいから再開し今は毎日ログインしている。

原神はアクションRPGで、現時点で70近くの操作可能なキャラクターがいる。フィッシュルはその中の一人で、紫の衣装と眼帯に身を包んだ金髪の少女。オズと呼ばれるカラスをお供に、いわゆる厨二病のような独特の話し方(フィッシュル語)をする。ちなみに声優を務める内田真礼は「中二病でも恋がしたい」の六花ちゃんで、明らかに公式が狙ってキャラ設定している。

フィッシュル:あなたは安らかに眠るわ。なぜなら幽夜浄土の祝福を受けた人に手を出すような夢魔など存在しないもの…
オズ:「おやすみなさい」と言っています。

こんな感じで、ビジュアル系ロックバンドの歌詞みたいなセリフをフィッシュルが言い、オズが一般の言葉に翻訳するのがお決まりのパターン。まれにうっかり素で喋ってしまった言葉をオズがフィッシュル語に逆翻訳するパターンもある。

キャラクターストーリーやこれまでのイベントで掘り下げられた情報をまとめると、彼女はエミという名のごく普通の女の子で両親に愛され育てられた。子供の頃に読んだ「フィッシュル皇女物語」というファンタジー小説に強い影響を受け、主人公のフィッシュルになりきった言動をするようになる。

彼女はサービス開始直後からイベントに登場し、わりと公式から愛されている。しかし強烈な個性と出番の多さから、うざい、くどい、痛い、などのネガティブな反応を受けることもしばしば。

で、ここから本題。2022年夏のイベント(Ver2.8 サマータイムオデッセイ)でフィッシュルの掘り下げがあった。2021年に金リンゴ群島というイベントがあり(私は2021年は離れてたので未経験)好評だったそうだ。原神はイベントの復刻は基本的にやらないのだが、2022年に金リンゴ群島が復活するということで期待を集めた。実際は復刻ではなく前年のマップを流用した新イベントで、プレイヤーからは賛否両論だったらしい。

金リンゴ群島という幻の島に、キャラクターの精神世界を表す幻境(ダンジョン)が出現し、プレイヤーはそこを冒険しながらキャラクターの理解を深めるという内容。フィッシュルの幻境は物語の舞台である幽夜浄土と古城。進んでいくと彼女の過去が明らかになる。物語に夢中になった幼いフィッシュルに両親も調子を合わせてくれた。しかし何年経っても皇女の真似を続ける彼女に両親はそろそろ卒業して時間を有意義に使うように諭す。

幻境の最終盤、フィッシュルは幽夜浄土を荒廃させた自分の分身と出会う。分身は幽夜浄土を現実を直視できない者の墓場と呼び、荒廃させた理由はフィッシュル自身にあると指摘する。分身はフィッシュルの中の恐れや悪夢の象徴。忠実な従者のオズも寝返って分身の側についてしまう。フィッシュルは仲間に支えられて分身に戦いを挑む。

フィッシュルは自分が現実を直視できない臆病な人間だったこともあったと認める。しかし幻境にそびえる城の壮大さと美しさを見て自分の出発点を思い出す。現実に向き合えないから物語に逃げ込んでいるのではない。ただ子供の頃に見た物語の世界があまりに壮大で美しかったから自分はそれを捨てないのだと。

再びフィッシュルの元に帰ったオズは言う。オズは「フィッシュル」に従うものだから分身もまたフィッシュルならどちらに従ってもよかった。しかし実際は違う。「フィッシュル」は時に誇り高く時に臆病であり、心の中の分身に罵倒されながらも頑なに物語の世界を捨てなかったエミちゃんのことであると。

このオズのセリフは製作者のミホヨの言葉でもあると思う。フィッシュルは物語の皇女殿下ではなく、その姿を猿真似する痛いエミちゃんでもない。フィクションの世界を心から愛し、現実の圧力に抗って空想の世界を守リ続けるファンボーイ/ガールの化身、それがフィッシュルというキャラクターなのだ。

最後に突然挿入されるムービー。これが素晴らしく厨二的でかっこいい。ミホヨは物語のキャラのコスプレをする痛い厨二病のエミちゃん、というイメージを払拭し、逆にこんな素晴らしい世界をお前たちは手放すのか?私は手放さない!と挑発してみせるバッドアスに磨き上げたのだ。

あと、このフィッシュル幻境でバトル時に流れているBGMがまたかっこいい。序盤は古風な弦楽曲だが途中でフラメンコギターやエレキギターが混ざり激しくなる。バトル中しか聞けないから、弱い敵相手だと前半の穏やかな部分しか聞けず、最後の図書館バトルあたりの長期戦でやっと後半が聞けるニクい演出。