エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

話題作なので観てきた。

賞を取った映画はなるべく見るようにしてて、映画館に見に行くか、サブスク待ちするかで迷ったけど紹介記事を見るとわりとアクション寄りだったので映画館へ。

一つだけ、どうしても言いたい。

会社の福利で優待券1300円で映画を見れるから、それでチケットを買ったんよ。

で、開始まで20分くらいあったから近くをブラブラしたりドリンク買ったりした。

さ、入場するか、というところでチケットが見当たらない。

こういう場合はチケット売り場に言えば再発行してくれるところもあるみたいだけど、上映10分前きってたのと恥ずかしさ半分でもう一回チケット買った。

ということで1300(優待)+1900(再購入)+410(ドリンク)のお高めのエンタメになってしまい、最初からテンション⤵

内容はかなりぶっ飛んでいた。

とは言え、映画館に行くか迷っていたときに紹介記事を読んで雰囲気は知っていたのでそこまでショックは受けなかった。

指がソーセージになったあたりで退出した人がいたけど、わからなくはないw

全体的に完全に理解したとは言い難いが、言いたいことはおそらくわかったと思う。

非常にデリケートで人に勧めにくい映画だ。

ポリコレ映画と言ってしまうと言葉が足りない。

おそらく「正しいポリコレの教科書」みたいのを表現したかったんじゃないか。

メインキャストはアジア人だが、スタッフスクロールの名前に意外とアジア人は少ない。アジア人の有名監督がスタッフを引き連れてハリウッドに乗り込んだという感じではなく、多様なバックグラウンドをもったアメリカの若手が作った正真正銘アメリカ映画である。

昨今アメリカ映画はポリコレの強い影響下にある。現場の作り手たちはひしひしと感じていることだろう。しかしポリコレという概念は誤解されて広まっている気がする。本来それは言論弾圧的なものではなかったはずだ。笑いものにしてはいけない、キャストに一定数のマイノリティを入れなければいけない、etc…。あー!もう面倒くさい!本当にそれがポリコレが求めていることなの!?

この映画はとても抽象的にしているが今の我々の現代社会のことを描いている。なぜポリコレという概念が生まれたのか。多様な人々が多様な考え方を持っている。中にはどうしても受け入れられないものもあるだろう。絶対にNO!聞く耳持たん!あらそう。話しても無駄ならそんな世界に意味はないわ。黒いベーグルに飲み込まれてしまえばいいのに。

そうやって世界が「分断」という虚無に飲み込まれてしまわないようにポリコレは生まれたのではないか?受け入れられないものを遠ざけて臭いものに蓋をするのは違う。指がソーセージになってしまった。あーそういう人もいるかもしれないけど、それを前面に押し出すのは変じゃね?頭の上にアライグマを乗せないと生きられないんだ。えーと流石にこれはツッコんでいいんじゃないか?一体どこまで真顔でいるつもり?言いたいことは言っていい。でも優しくなって、一緒に生きていく道を探そう。それが本来あるべき姿じゃないのか?

主人公のエブリンは手に入れた能力でどんどん強くなる。しかしどんなに強くなっても最終的に行き着く先は虚無。華やかな世界で活躍する可能性が見えたけど、そこは今のエブリンの居場所ではない。大事なのは今の自分を肯定すること。そして周りの人達に伝えたいことは伝え、その上で仲良くやっていくこと。

とまあ、やもすると説教臭く感じる話なので人に勧めるのはためらうな。

Don't be serious. Take it easy. の精神で言いにくいことをギャグ全開で言い切ったのが評価の理由かな。

ディルドのちんこはOKだけどディルドinアナルはNGなんだね。勉強になりました。

2023/3/27追記。

一晩寝ていくつか書き足したいことがでてきた。

見ていてマトリックスのオマージュがいろいろあるなと思ってた。カンフー最強だし、能力を一瞬で獲得できるところとか、一斉に放たれた銃弾を止めるところとかも。しかし本作のネブカドネザルにあたるアルファバース連中の格好はなんでこんなにダサいのかww

あとはまあ、例によってピングドラムを思い出したね。話の抽象化具合と現実と非現実が混ぜこぜの感じが幾原みを感じる。

娘の姿を借りたジョブ・トゥパキは虚無と破壊の概念、つまりサネトシ先生だ。旦那の姿を借りた(?)アルファ・ウェイモンドは寛容と融和の概念、つまり桃果だ。2つの概念は人間がもつ異なる側面で、現実世界で常にせめぎ合っている。

力を手に入れたイブリンは最終的に旦那の側につく。黒テディを白テディに変えたように、銃弾をギョロ目玉に変えよう。世界を壊して作り直さなくとも、人と人の間でリンゴを融通して仲良く生きる方法を探そう。

情報量が多くて迷子になりそうだけど、本筋は父親~イブリン~娘の世代間の意思疎通の話だろう。イブリンはコインランドリーの業務や納税の雑務に日々追われている。なのに娘はレズで「彼女」を連れてくるし、口うるさい父親が訪ねてくるし、キャパオーバー状態。でも待って。何が本当に大事なのか優先順位を考えて。

娘がよくわからない面倒事を持ってきたと思うかもしれないけど、イブリンだってかつて父親の反対を押し切って駆け落ち同然で旦那とアメリカに渡ったのだ。訪ねてくる父親に神経質になるのは無様な姿を見せたくないからだ。

イブリンは父親に言う。なぜあの時止めてくれなかったのか。渡米を後悔しているのではない。ただもっと思っていることを正直にぶつけてほしかった。娘に同じ気持ちを味わわせたくない。そしてイブリンは娘に本音で向き合うことにする。世間一般の大人ではなく、たった一人の母親として。あんた太り過ぎよ!