大聖堂

なぜかキリスト教について考えている。その2。
こちらは時代が11世紀ころ、イングランド。ローマは東西に分裂して今やビザンツ帝国として残るのみ。西側は蛮族の末裔たちに乗っ取られてしまった。時代はちょうど十字軍のころなのだけど、この小説はもっぱらローカルで、ある伯領、ある修道院、ある司教、ある建築家一家を中心として語られる。文庫本で3巻組、それぞれが結構な厚さがあるのだが、読み始めたらおもしろくてしばらく他のことに手がつかなくなる可能性高し。小説を読む喜びを感じる。
この本はキングスブリッジという、由緒はあるが貧しい修道院をおもな舞台にしている。メインキャラクターの修道院長は、修道院の経営改善のため、そして壊れた聖堂を立て直すため奮闘する。その過程で市を建てたり、織物業を興したりして、いつのまにか教会を中心とした街に変貌していくのがおもしろい。フィリップ神父は宗教家だが、負けるとも劣らず、実業家でもあるのだった。そこらへんが現代的だったり、または逆に11世紀的だったりして何だか新鮮な世界観。当時のキリスト教はもちろん宗教であったが、同時に権力と結びつき権力者に威を与えるものでもあった。そして弱い者を束ねる力を持っていた。