ドグラ・マグラ

読みきった。
意外と面白かった。
数日前に「おもしろくない」と書いたときは、ちょうど前半3分の1あたりのところで、胡散臭い精神病のお説を長々と聞かされていたところだ。もしこの後事件の真相が明かされるときに、これこれこうな精神の働きでこの事件が起こったのだよ、などとどこかの脳学者みたいなことを吹きやがったら、もしそれがオチだったら、どうこき下ろしてやろうかという気分だった。幸い結末はそちらとは微妙に別の方向に伸びていったので許す。

読むにあたり、携帯上の操作のしやすさを考えて、あらかじめ同じくらいの分量で4分割しておいた。(ちなみに黒死館のときは3分割。)
しかしまともに事件として動き出したと思えるのは3番目あたりから。
つまり全文の約半分ほどが、脈絡もなく、単体でも意味がよくわからない断片をいくつも読まされることになる。正直ちょっと退屈する。特にチョンガレ節はしんどい。初読のときはよみとばしても差し支えないと思う。

しかし若林博士の奇妙な行動から事件が動き始めると、そこから先は全速力で、読むのにさほど時間はかからなかった。
若林博士の調査記録、そして正木博士の遺言によって語られる第一と第二の事件、世にも奇妙な因縁を持つ絵巻物と呪われた血筋。それをめぐる学者の攻防。そしてなにより、語り部である私はだあれ? わかってるようでわからないこの問いは終わりのほうまでずーっと引っぱられます。
などの濃い題材を語るに、談話・遺言・無声映画・幻視・夢などとあらゆる特殊効果で惑わし、中国幻想譚や愛憎劇、チャンバラ活劇(まじで。)までごちゃまぜてんこもり。
なんか、おなかいっぱいという感想しか出てこない。
姑獲鳥の夏と、そこはかとなく似た匂いがするので、あちらをお好きな方は読んでみたらどうでせう。

しかし驚くべきことに、この本の刊行年は1935年。ちょっ、70年前・・・。もちろん戦前です。まったく古さを感じない、というか、最近の人が大正趣味に書いたものと言われても納得しそうな。
ちなみにWikipediaで1935年を見てみると、、、

あれ、あまり古い気がしなくなってきた。

やっぱ古いな。
http://ja.wikipedia.org/wiki/1935%E5%B9%B4