アンブレイカブル

フットボールの花形選手のデビッドは、妻と別居し警備員として平坦な日々を送る。
彼の身体はなぜだか傷つきにくい。
コミックマニアのイライジャは難病を抱え、少しの衝撃でも骨折してしまう。
イライジャはデビッドに接近し、告げる。「お前は俺の捜し求めてきたヒーローだ」、と。

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夜の冷え込みがきつくなり、密閉の弱いアパートの空気はひんやりしている。
そんな中、肌シャツとパンツだけで映画を見た。
静かな映画だった。
BGMもないに等しいし、登場人物のせりふも少ない。
でも、これが「怖い話」であるということははっきりと肌で感じられる。
ホットミルクが飲みたくなるくらい身体が冷えきっているのは、
何も冬へ移りかかった気候と無頓着な薄着とのためだけではない。

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実際にいるかどうかは別として、デビッドの頑健さとイライジャの脆弱さは体質の問題だ。
そしてデビッドはそれを大して気にも留めていない。イライジャが現れる前までは。
彼の関心事はもっぱら妻との関係であり、少し不安定になっている息子のことである。
自分がヒーローだなんて、人並み以上に考えたこともなければ、なりたいと思うこともない。
しかしイライジャにとってはそれが全てだった。
コミックの中のわかりやすい善と悪との世界観は、彼の肉体的に制限された小さな世界では矛盾なく完結してしまっている。
もはやそれは盲信、狂信に近い。
そして、信じる者の行動というものは、怖ろしいのだよ関口君。