吾輩は猫(びょう)である

「吾輩は猫(びょう)である。
 名前はまだ無い。
 どこで生まれ落ちたかとんと見当がつかぬ。
 何でも薄暗いじめじめした子宮のような所で
 ギャーギャー鳴いていた事だけは記憶している。
 吾輩はここで始めて人間というものを見た。
 しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番脆弱な種であったそうだ。
 我々は時々この書生というのを捕まえて煮て食うという話である。
 しかしその当時は何という考もなかったから別段手段を選ばなかった。
 ただ彼の胴を掌でスーと引き割いた時何だかうじゅうじゅした感じがあったばかりである。
 ねっとりと鼻の周りに絡みつく血液の臭いに吾輩は吾を忘れてハイになった。
 喰らった。啜った。すでに満身総意だ。
 息をつく間もなく湧き起こる野生と食欲。
 少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始めであろう。
 この時・・・」
「ちょっと待って。それ本当に夏休みの宿題で出す気?」
「うん!自分で作ったものなら立派な自由研究だって先生言ってたもん。」
「そりゃ作文としてはいいと思うよ。結構良くかけてると思うな。
 ・・・それはいろいろ怒られちゃったりしないのかな。
 夏目家の人とかバンプファンの人とかに。
 ていうか小学生でその猟奇性はどうなのよ。」
「冬休みのときは偽札とか子供とか作ってきた子もいたけど、怒られてなかったよ。
 どっちかっていうとその子のお母さんやお父さんが・・・」
「うーん。その先は聞きたくないわ、お母さんとしては。
 で、話の続きはどうなるの?」
「この先はまだ考え中なんだけど、この猫(びょう)は学校の先生の家で飼うことになるの。
 でも生まれてすぐ人の味を覚えてしまったから、飼い主の客人を片っ端から屠っていって。
 赤シャツとか気に入らない生徒とかが次々消えていって、先生は闇の実力者として学校を牛耳っていくのね。
 喜んだ先生は石造りの宮殿をこしらえて、猫(びょう)はそこに住むの。」
「そうなんだ・・・(この子は将来いったいどうなるのかしら。)」
「人が来たら『吾輩は10万とんで2歳である』て自慢したり。」
「(人に迷惑かけたりしなきゃいいけど)」
「謎かけを出したりして解かれたら崖から飛び降りたりするの。
 でも死ねないの。
 100万回死んでもね。それがG.E.レクイエム。」
「(いつまで続くのかしら。)
 (ま、いっか。暇だし。)それで?」
「何十人もの勇者が数え切れないほど勝負を挑んだけど、
 そのたびに天翔龍閃とか国士無双天和とか出してきて
 どうしても猫(びょう)を倒せないの。
 そこへ彗星のごとく現れた天敵、彌起命(みきのみこと)と彌仁命(みにのみこと)バカップル。
 彼らはビールを8つの樽になみなみ注いで、猫(びょう)を待ち伏せたの。
 頭いっこしかないのに、バカだよね。
 で、猫(びょう)と酒盛りしたの。
 4個目を飲み干したあたりで猫(びょう)の足はふらふらになって、
 5個目でテーブルに突っ伏したと思ったら
 復活して6個目を元気にあけたのだけど、
 7個目のふたを割ったところで人事不省。
 そのままビールの中に落ちて南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏
 ありがたいありがたい。
 1個目で早々にリタイヤしてたバカップルは次の日目を覚まし、
 ぐったりした猫(びょう)のしっぽを切ったら剣が出てきて。
 あたりと書いていたからお店に持っていったらもう一本もらえて得したね。
 二人で仲良く剣術を極めましたとさ。」

おちなし。