怖い夢を見た。

今日の朝方、恐ろしい夢を立て続けに3本見た。
−1つめ−
すっかり暗くなった夕方の公園を歩いていた。
まだ人通りは絶えたわけではなく、若者やカップルが歩いているのが見える。
ふと前方を見ると人だかり、といっても6,7人だが公園の一角に固まっている。
その向こうに巨大な生物が見えた。
大きさは2.5メートルほど、全身が茶色の体毛に覆われ、黒っぽい顔の中心に大きな鼻が見える。
あれはナマケモノだ。
その昔、今はもう絶滅したが、オオナマケモノという巨大生物がいたことを、子供のころ読んだ科学雑誌には書いてあった。
それに違いない。
尤もメガテリウムはカバのような格好をしていたらしいが、今20メートルほど手前にいるそれは、どうみてもどこか愛嬌のある現代のナマケモノの拡大コピーだった。
見物人は物珍しそうに眺めたり、やがてそのずんぐりした仕草に笑い声を上げたりしていた。
私は後ずさりした。
なぜなら、ナマケモノは時には俊敏に動くこともあり、そしてその両手の鉤爪は相手を引き裂くに十分な鋭さを持つことを知っていたから。
巨大ナマケモノは大きなあくびをして二足で立ち上がった。
2.5メートルはいわば座高で、立ち上がった高さは3メートル軽く超えていた。
見物人はようやく危険を感じて、ゆっくりと、そして振り向きざまにばらばらと走り出した。
私はすでに出口付近までたどりつき、遠くから光景を眺めていた。
巨獣は一度空を見上げた後、人を追って動き始めた。
パーン、パーンと乾いた銃声のような音が断続的に聞こえてくる。
やがてそれが巨獣の足が地面をける音だと気づいた。
映像と音にタイムラグが生じるほど離れていて、巨獣はしかし巨大だった。
見物人の一人に追いつくと、生物は振り上げた右腕を払った。
人間は何か黒いものを撒き散らしながら、地面に叩き伏せられた。
巨獣は足元を一瞬見やって、再び次の獲物を求めて走り出した。
限界だ。もう見られない。
警察か、それとも救急車を呼んでこないと。
私は公園を出て、公衆電話を探して走り出した。
見当はつけてきたのだが、思ったところに電話は見当たらない。
利用の減少で撤去されたのかなどと思いながら、歩を緩めた。
自分の後ろ、すぐ近くに人の気配がする。
足を止める。後ろから聞こえる足音も止まる。
振り向くと、青い銀紙を貼ったシルクハットをかぶり、マジシャンのような格好をした小柄な男が立っていた。
うっすら笑っていた。
なんとなく、この男はあのナマケモノを操る猛獣使いなのだと直感した。
「こんなところにいたのですか」みたいなことを言っている。
男が左手に持っていた棒のようなものを振り上げたような気がする。
そこから先は記憶にない。

−2つめ−
私は部屋で人を殺した。
めっためたに切って、自分の服と部屋を血で汚した。
そのまま疲れてベッドに倒れこんだ。
目を覚ました。
まだいやな気分が残っていた。
頭を上げて部屋を見回した。
部屋はきれいに片付いている。血の跡などない。
自分の服を見た。買ったときと同様に白いトレーナーを着ている。
起き上がって亡骸があったところを見て、なにもないことを確認した。
わけがわからない。
自分は確かに人を殺めた。
相手の身体を切り刻み、赤く染まった絨毯、赤く染まったカーテン、赤く染まった両手と光を反射する包丁の感触を今も覚えている。
誰かが、元に、戻したのだ。
アパートの玄関の引き戸が開く音がした。
誰か、が、来る、と直感した。
部屋のドアがちょっぴり開いている。
閉めなくちゃ。
早く、閉めて、鍵をかけなくちゃ。
早く、早く
閉めなくちゃ、閉めなくちゃ。
ノブに手がかかる直前、ドアが思い切り開いた。
しゃれたスーツを着た男が立っている。
髪もきれいに分けられ、顔立ちも割と、いや、かなり整っていた。
うっすら笑っていた。
その表情に思わず嫌悪感を抱いた。
「逃げられませんよ」
そんなことを男は言った。

−3つめ−
実に恐ろしいことに、もはや一切内容を覚えていない。