マトリックス レザレクションズ

12/18、公開の翌日に見てきた。

ちなみに1は劇場で2回、2と3も劇場で1回ずつ見てる。シリーズ物では一番好きかもしれない映画だ。スターウォーズもかなり好きだが、どちらがより心に刻まれたかと言うとマトリックスの方かもしれない。

そんな自分からして、見たファースト・インプレッションは、「とてもがっかりした。」

スターウォーズep9もかなり残念な印象だったが、あっちはまだジョージ・ルーカスによるものではないのでディズニーが付け足した蛇足と思うことも出来る。しかしこっちはオリジナルの創造者ウォシャウスキー監督(の半分)が手掛けているから気持ちの持ってく先がない。

3週間くらいたち、もう一度冷静になって見に行こうかどうか迷っている。とりあえずアマプラでオリジナル3部作と、クラウド・アトラス、ジュピターまで見たので、そちらの感想を書いて、その後リザレクションズの感想を書こうと思う。

マトリックス3部作

1作目は何度見ても素晴らしい。思い出補正もあるかもしれないが、ストーリーは全く無駄がない。アクション、SF、ラブストーリー、ヒーロー物などいろんな要素を含み、多少の謎は残しつつもきっちりと「俺たちの戦いはこれからだエンド」にまとまっている。映像は過剰なまでにスタイリッシュで、代名詞ともなっているバレット・タイムや、黒画面に上から落ちてくる緑文字、全体的に緑に色調補正された映像など、独自の雰囲気を醸し出している。

2作目は世界観の掘り下げだ。1作目を1本の映画にまとめるために省かれた人間側・機械側の陣営の多様さが描かれ、さらに派手なバトル、カーチェイス、そしてネオはトリニティを蘇生させる。会話は1作目より難解で、何を言いたいのかわからなかったり、そのシーン必要か?と思ったりもする。もともと2と3は前後編として同時に制作され、公開も半年くらいしか離れていなかった。無駄に思えるシーンはただの前編を1本の映画として成り立たせるために必要だったのかもしれない。

3作目は物語の一つの結末を描く。2で明かされた、人間を支配するためのマトリックス、そのシステムに組み込まれた救世主とザイオンの破壊(リロード)。永遠に繰り返すループから抜け出すにはネオとスミスという2つのイレギュラーが必要だった。舞台はマトリックスではなく現実世界が主となり、トリニティとネオは命を落とし、代わりに機械と人間は停戦してザイオンは破壊を逃れた。

2と3はとても真面目に世界観を膨らませているのだが、多くの観客はマトリックス内のスタイリッシュなアクションを期待していたようで、評価は賛否両論のようである。

クラウド・アトラス

見たと言ったが嘘だ。2回チャレンジして2回とも途中で見るのをやめてしまった。2012年公開の3時間近くの大作。6つの時代の話が並行して進む。そのうち3つをウォシャウスキーが監督している。たぶん3時間きっちり集中して見れば面白さがわかるかもしれないけど、Wikipediaのあらすじを読んだだけでお腹いっぱいだった。

ちなみにウォシャウスキー監督はレボリューションズとクラウド・アトラスの間に、スピード・レーサーというマッハGoGoGoのリメイクを監督しているがいまいちな成績だったみたい。

ジュピター

ウォシャウスキー監督の2015年のSF。レビューを見るとつまらないという評価ばかりなのだが、意外と面白かった。スター・ウォーズメン・イン・ブラックフィフス・エレメントあたりが好きな人は楽しめるはず。タイトルが良くないね。「王女に転生したらイケメン王子やワイルド護衛に囲まれてもう大変、でも地球は私のものだから好きにさせない!」とかにしたほうがいい。

最初の一時間はどういう映画かわからず、クラウド・アトラスみたいにややこしいのかなーと緊張しながら見てたけど、途中のお役所仕事コントを見て、ああ、監督が面白いと思うものを全部ぶっこむ系の娯楽映画か、とわかってから肩の力を抜いて楽しめた。こういう映画を待ち望んでいる人は一定数いると思うんだけど。自分はMCUを一切見てないから世間と感覚がずれてるのかもしれない。

マトリックス・レザレクションズ

良いところ。

・前半でこれでもかとメタ展開が繰り広げられ、これは三部作と関係のない世界線の話なのか、それとも違うのかが曖昧なままウサギの穴を通り抜けたら、じゃじゃーん!三部作と地続きです。ザイオン?うっかり滅んだわ。ネオ?蘇生させてもう一回マトリックスに繋いどいたわ。という盤面ひっくり返し感。正直嫌いじゃない。

・今までネオが救世主で特別なのだと思っていたけど、ネオが奇跡の力を発揮するときはいつもトリニティと一緒だった。ネオとトリニティの化学反応こそが重要。二人が老いていたって記憶をなくしていたって構わない。二人が揃えば何かが爆発する。なんならトリニティがスーパーパワーを発揮したっていい。ふむ。悪くないだろう。

マトリックスを全否定して解放されようとするだけじゃなく、マトリックスを自分たちの好きなように変えていこうという姿勢。三部作は深刻になりすぎたから、このくらいでいいんじゃないかという気もする。

悪いところ。

・映像がいまいち。眼を見張るようなキレッキレの映像表現が今作にはない。映画を見る前はあの革新的な映像の2020年代バージョンが見れるはずと「勝手に」期待してしまっていたので心底がっかりした。

・後半のバトルがすごくありきたりで安っぽく見えた。正直なとこ一刻も早く劇場から出たくてちゃんと見てなかったんだけど。でもこれはマトリックスだと思うから許せないのであって、ジュピターだと思えばすべて許せる気がする。

・どうせ同窓会なら、やっぱりスミスとモーフィアスは同じ役者で出てほしかった。モーフィアスは完全に別の役だから仕方ないけど、老けたネオと老けたスミスの共闘(?)は見たかった。

いろいろ思うところはあるのだけど、マトリックスの創造者(の片方)が作った映画なのでシリーズの正当な続編なのは否定しようがない。我々はマトリックスの世界に夢中になるあまり、監督がどういう人物なのかに注意を払わなすぎたかもしれない。彼らが作りたいのは支配や抑圧に立ち向かい自由を勝ち取る映画であり、マトリックスはその表現の一つにすぎない。しかし世間は彼らにマトリックスを作るよう強要し続けた。強要されて作品を作るなんて彼らの全く望むところではない。弟アンディ(今は妹リリー)が今回参加しなかったは別作品の都合もあったようだけど、このシリーズに戻りたくなかったらしい。

10代の多感な時期に三部作を見て、おっさんになって続編を見る。ネオもトリニティも老けている。監督も老けている。自分も老けている。お互い齢取ったなぁ、と思える映画は、たとえどんな出来であっても特別なものだ。

まあいろいろ書いたけど、やっぱりマトリックス2021が見たかったんだよなぁ。このがっかり感は強い期待の裏返し。さらなる続編は希望しない。やるなら見に行くけど、監督がやる気なさそうだし無いだろう。